■目的
これまで、持ち運びの容易なポケッタブルHPAを制作するためにHT7750Aで電源部を模索していたりしたが、新しいMP3プレーヤーを購入して考えが一変した。
トランセンド製のものだが無音時のノイズも皆無、さらに高音質、愛用しているSONYのインナータイプのヘッドホンでの出力も十分だったのでそのままでの使用で不満が無くなったのである。
そこで、自宅のソファーで使用できるポータブルなアンプの制作に切り替えた。
ソースはCD。ポータブルCDプレーヤーのLine-outから今回制作のアンプに接続して自宅での愛用品64Ωのヘッドホンを駆動できるものとした。
自宅といってもACコンセントまで距離があったりするので、自由度を優先して電池駆動とする。
ここまで実験をやってきたのだから有効活用ということも含めて・・・
電池はもちろんNiMH。太陽電池充電器を利用して日中充電しているのでそれを利用する。
太陽電池が小さく充電までに日数がかかる。デジカメ用に購入してある20本ほどの充電池でAC充電も併用しながら運用する。
■使用デバイスの検討
5Vで駆動できるOPAを購入してきた。
以前から試してみたかった NJU7044D(秋月で1個200円)。
電源5VでFET入力、フルスイング高出力電流、しかも4回路なので A47の回路にすれば64Ωのヘッドホンであれば十分だと考える。
まずは、ブレッドボードでノイズなどのチェックだ!
■ブレッドボード実験結果
第一印象は、オフセットがすごい。
このままではヘッドホンを接続したくない。実用化する場合はこのオフセットをやっつけないといけない。
飛んでもいいヘッドホンを接続してその音を聞いてみる。ヘッドホンの質が悪さをしてよくわからない。1000uFを出力にシリーズ接続しお気に入りのヘッドホンで聞てみた。
華やかで繊細な中にもしっかり張り出しもあり、良い音を出してくれてはいるが、広がりや音質が合わない。
試しに、デスクトップとしているスピーカー(以降SP)ST05に接続し、有効出力がかなり低いのでヘッドホン状態で聞いてみる。
いつも聞いている好みの音と比較すると楽器がその音で聞こえてこない。
バッファを替えることで音色の調整を考え、融通のきくディスクリートバッファとの組み合わせに期待を抱く。
OPAの素性は悪くなさそうなので、工夫次第で化ける可能性が大きいと感じた。
■LTSpiceで回路設計
LTSpiceを触り始めて初めてのシミュレータでの実験となる。
JRCのサイトからNJU7044DのSpiceモデルをダウンロードしてディスクリートバッファとともに組み上げてみる。
簡易計算で各定数のあたりをつけ、シミュレータの力でその値を微調整していった。
さらには、ブレッドボードに組んでみて実際にチェック。
ほぼ問題なく動作するのだが、実際での測定結果や使用感なども考慮しながら調整していくとシミュレータとブレッドボードの並列作業となった。
音が気に入らなければ自作の意味がないと考える方なので最終的には、シミュレータでの特性が"いまひとつ"でも好みの音になるかどうかで判断することにした。
結果としてこの作業は長い期間掛るものとなったが、それでもシミュレータのおかげでだいぶ楽に確実なものになったのは確かである。
ただ、シミュレータを使用していると 手持ちのTrやFETなどのSpiceモデルが無いことが不満となってくる。
やはり有償版の購入を検討してみるか・・・いくらだ?
R13,R14 はオフセット調整用。 実際には500KΩの半固定その中点をR16(30K)に接続。
電源の5Vは昇圧後を想定。C4の10uFはタンタルを使用。
シミュレータ上での特性図は以下の通り(注:実際のものではありません)
上のラインが周波数特性、下のラインが位相。
結局、ディスクリートバッファで構成。NJU7044D の2回路が余ることになった。
なにに使用するかいろいろ思案し真っ先に思いついたのがDC-offset回路。
テストしてみたが、DC-offset回路には向かなかった。できなかっただけかもしれないが、ほかの方法でオフセットは解決したので良しとする。
では、なにに使おう・・・・40mA取れるのであれば並列にして分圧回路にできないか。
シミュレータ上でうまくいったので気を良くして、すぐさまブレッドボードで実験してみた。
全く問題ない。
ここまで、1ケ月以上掛っているが、未だブレッドボードでのテストにとどまっている。なかなかまとまった時間が取れない。
オフセットは0.0mVでテスターで監視していても十分安定している。
翌日などに電源を入れてみると、0.2mVほどずれていることがたまにあるがブレッドボード故のパーツのリード線との接触が甘いためだと思われる。
電源投入後のヘッドホンの抜き差し時においてもオフセットが0.5mV以上になると抜き差しの際のノイズが入るが、今回は無音である。
最終段のバイアスは6mA。どうもこのあたりが出力との兼ね合いで塩梅がいい。
実は、デスク上のST05においてもそこそこの音量にすることができる。但し4ΩのSPでは電流が不足するためか思ったほどの出力にならない。
とにかく、最近見かけなくなったが能率の高いSPであればいい音をSPから聞ける。
早く基盤にまとめてケーシングするのが楽しみだ。
本回路を参考にされる方がいれば、
出力段の、2SC1627/2SA817 は音の好みで選択している。
2SC2120/2SA950 でも動作には問題ないので好みで選択していただけるとよいと思う。
音の傾向が結構異なるので比較してみるもの面白い。
電源の電池は2本用のソケットで2本運用を前提とすることにした。2本だと長時間の5V運用が可能だという理由からである。
もちろん1本でも動作するが少々持ちが悪い。
太陽電池での充電にムラがあるらしく2本のうち1本が先に電圧不足になるという事態が発生した。
このようなとき残り1本でもなんとか運用できるメリットがある。
ちなみに電池の消費電流は、30~50mA。5V側の消費電流は、15~20mA。結構効率は良い。
消費電流は負荷によるが、上記は8Ω負荷での実測。
シミュレーション上ではもっと必要なのだが本機の電源回路では電池持ちを優先している。
現行は47uH。22uHにすると電池の消費電流は45mA~に増えるが5Vの側での電流も増加できるため音も良くなるようだ。ただしこれはSPでの話。ヘッドホン利用をメインに考えているのであれば47uHで十分だと思う。
左は、2本のNi-MHでの昇圧後の状況(5V:テスターを立てて撮影のため針ズレを起こしています)
右は、無負荷時のオフセット電圧
■組み上げ/ケーシング
アルミケースやプラケースなど購入しようとWEBを物色していたが短時間では「これ!」といったものは見つからず価格も高い。
仕事の参考書を倉庫で探していると、本棚の奥の方にしっかり納まっている塩化ビニル製CDケースを発見。10年以上も前の代物である。
中にはその頃のPCのバックアップが大事そうに保管してあった。記憶にないが当然前職時代のもの。
中身はバイナリーで何やらソフトを使用してのバックアップのようだが情報漏えいが怖いのですぐさまシュレッダー行きとなった。
それで外側は今回のシャーシとして新たな道を踏み出させることにした。
電源部(電池、HT7750A回路、分圧回路)もアンプ部もぎりぎりで収められそうで、ポータブルプレーヤーとの大きさもマッチするので都合がいい。
INPUTは RCAとステレオジャック、OUTPUTは SP端子とヘッドホンジャック を予定。SWでそれぞれ切り替え。
電源はあくまでも電池がメインだがACアダプタも利用できるようにしておこうかどうか思案中である。
仕事がしばらく忙しくなりそうだ。
組み上げは今後の時間のあるときに作業することにする。
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