先日、秋葉原を訪れた際、秋月電子通商でお手ごろOPアンプを見つけたので、さっそく携帯アンプの制作をすることにした。

■目的と目標
手持ちの携帯プレーヤーで使用することを前提に・・・・
携帯プレーヤの電池持ちが良くなること(未知数)
携帯性が良いこと
単三電池1本で動作(緊急時を除き充電池使用:エコ)
16Ωはもちろん32Ω/64Ωのヘッドホンもそこそこ鳴らす
電池持ちが良い
基本パーツは入手性から秋月電子通商(以降 秋月)、千石電商(以降 千石)でそろえられること

これらのことを考慮していろいろ考えた結果
秋月で販売されている、単三3本用電池ケースに収め、低電圧動作の NUM3414 (4個パック200円)
で構成することにした。
低電圧とはいえ1.5Vでの稼働は難しいので、5Vまで昇圧することを前提に考える。

■回路チェックと定数決め
回路チェックでは、ブレッドボードを使用している。
手軽で良いのだが、変な雑音が入ることがあるので100% 信用していない(できない)が、ブレッドボード上で追い込むことで最終的に基盤に組みあげた時、往々にして良い結果が出るのでこの段階でどれだけ追い込めるかが結構カギだと思っている。

今回のチェックにおいて、主に4点
1.5Vの生成
2.電源の決定
3.DCオフセット電圧
4.S/N

1)5Vの生成
HT7750Aを使用して、Ni-MHやNi-Cd の1.2Vから5Vを生成。
47uHのコイルとSBD は、他の実験例を拝見していると、コイルによって出力電圧に差が出るようなので、一か八かで 面実装用のコイルとSBDを他店で購入。
無負荷で、5.01Vの発生を確認。当たりかも。0.01はテスターの誤差なのか?それともノイズ?
HT7750Aの仕様では電池電圧0.7~0.9Vで昇圧がストップされるようなので充電池の過放電の心配もなさそう。
面実装用の47uHコイルがどのくらいの容量かわからないが、かなり小さい。

1st_PSU_HT7750A

1st_PSU_coil_sbd

ブレットボード用にリードを付けたもの。SBD(左)、47uH(右)

配線次第で電源から多量のノイズが出るもよう。
ブレッドボードだからしょうがないが制作の際の配線の距離には要注意だ。
1.5u(積セラ)+47u(電界コン)のペア(パラ)だとノイズが一番低かった。
秋月で販売されている10u(積セラ)1個でも同様にノイズは低い。
手元に1個しかなかったので今回は見送ったが2個パラで使用してスペックシートの容量にできる。

2)電源の決定
当初、単電源動作も考えたが最終段の出力コンデンサの容量からくる大きさ、ブレットボードで組んだ時の2電源時の音との比較差から2電源で行くことを決定。
そこで、NJM3414を1個を2電源生成用に使用。

1st_PSU_NJM3414

3)DCオフセット電圧
NJM3414は単電源用オペアンプとして紹介されていて、スペックシートにも単電源時の値のみが記載されているが、お決まりの回路構成で2電源で動作する(筈だった)。
非反転入力の回路で適当な抵抗値で組むと、DCオフセット-90mVほど発生する。
OPアンプは、ゲイン計算くらいしかわからんのでこの発生がなにを起因にしているのか見当がつかない。
DCオフセット回路で無理やり抑えて1mVにしてみたが根本解決になっていない。気持ちが悪い。
反転入力で組んでみるとその発生も格段に少ない。
NJM3414の反転入力のインピーダンスは分からないが、加齢耳では違いが感じられなかったので安易に反転入力で決定。
-2.5mV(32Ω負荷時)で安定している。
ボルテージフォロアでのオフセットは発生しないようなので、そのままバッファとして使用できそうだ。
もっと勉強してからのほうが良かったかのとちょっと後悔。
しかし、この自作熱は何かやらないと抑えられそうもない。
さらなる勉強と追試は後回しにして、今回は反転回路で作業を進めることにする。

4)S/N
反転入力に決定したことで入力抵抗とコンデンサ次第でノイズレベルがだいぶ変わると思われるので、この辺りを試行錯誤する。

入力コンデンサは、接続機器からのドリフトや接続機器自体の保護のためにも付けておいたほうが無難。
音質に影響を与えるので品質の良いものを選択する。とはいっても手持ちに音響用はない。
0.47/50V(フィルムコン)、2.2/100V(フィルムコン) 、3.3/16V(電界コン)、10/16V(タンタル)を試した。
condensers
手持ちのパーツでのテストなので少品種なのはご容赦。
0.47uFでは多少容量不足かなと感じた。基本的に広域がきれいなフィルムコンは個人的には好みだが 2.2uFは今回の用途ではさすがにサイズが大きい。
チップタンタルは小型でレンジ、音色共バランスが良かったのでこれに決定。
電界コンでも 4.7uF 位で問題ないと思う。フィルムコン以外は極性に注意!!
入力コンデンサでこれだけ音色が変わるかということを発見するので是非好みに合わせて欲しい。
電界コンの場合フィルムコン(0.1uF)の抱き合わせも結構良かった。
どの組みあわせでも特にノイジーになった気配はない。
どのコンデンサーを使用しても、かすかなヒスノイズがあるが気になるほどではない。

上記を総合した結果
発生させた5Vを簡易分圧器で+/-2.5V に分け、試聴を繰り返し前段 NJM3414(反転入力:ゲイン10倍)+バッファ段 NJM3414(A47接続もどき) とした。
(回路図では、追試で塩梅のよかったゲイン2.5倍の抵抗値に変更済。ヒスノイズも下がった。)

1st_ALL

NJM3414 アンプ全回路

■制作

パーツを準備する
抵抗は、使用する抵抗をそれぞれ計測して各chで使用する抵抗値をペアリングしておく。

ケースの準備
この小さなケースに入れるのか・・・・不安がよぎる
ちまちまとニッパーとカッターで少しづつ削っていく。一気にいくと割れてしまう可能性あり。
ケースを電池1本分残して残りのスペースを確保。
電極だけを外して空きスペースに単3大の基盤を2枚入れようとも考えたが、ユニバーサル基盤を使用したいので その実装度と久々の細かな工作ということで少しでも余裕のとれる方法を選択。

case

単3 3本用電池ボックスの加工

ユニバーサル基盤を加工。

pcb

ユニバーサル基盤の加工

パーツを実装していく。
パーツの配線図は掲載しない(申し訳ない)。ただ面倒なだけなのだが。
部品面から見て判断してほしい。電源→入力→出力の順に並んでいるので推測しやすいと思う。
1)電源部のみパーツを実装。はんだ付け。
2)電源部を実際に通電して動作を確認
動作した。一安心。ブレッドボードと同じく5.01V出ている。
3)ブレットボードのアンプ部につないでみる。問題なし。OK。
4)アンプ部のパーツを実装
電源部で余裕をとりすぎた? あれ?穴が足りない!・・・一部空中配線。

5)配線チェック!!
ミス発見。修正。

6)はんだ付け。
基盤が組みあがったところ。

pcb_built

チップタンタルの極性が逆についています。工作の際には注意!
線の入っているほうが+極。

7)前段部のOPアンプをソケットに実装。
8)通電チェック
オフセットが異常ではないかチェック。異常の場合はすぐに電池を外す。

9)バッファ部のOPアンプをソケットに実装。
10)通電チェック
オフセットが異常ではないかチェック。異常の場合はすぐに電池を外す。

ここまで、異常がなければ、いよいよヘッドホンに繋ぎたくなるが、ぐっとこらえて
スピーカーへ接続する。ボリュームを上げて左右の音が正常がどうか確認。極端に片方だけ
音が歪んでいたりしたら配線ミスの可能性あり。アンプ部のOPアンプを抜いてはんだ付けを再チェック
ジャック部の接触異常というのもあるのでぐるぐる回してみたりも試すこと。

加工したケースに収める。

builtup

組み上げ完了

※あとから慌てて写真を撮ったので前段のOPアンプがNJM2119Dになっている。

ヘッドホンとボリューム位置に少しづつずれが発生。隙間が空く結果となった。
ちょっとカッコ悪いが久々の工作で勘が鈍っていたようだ(勘かよ!?)。

view

サイド・トップ ビュー

■インプレッション

気になる昇圧5Vからのノイズの影響はなさそう。

そもそも耳に聞こえる範囲で発信していないのでそれ自身が聞こえるとは思わないが、可聴範囲内へ大きな影響がなければ良しとする。時折、発信と耳鳴りと区別ができなくなることがある。加齢は怖い。

全体消費電流は 10.8mA 携帯用としてはまずまずだ。
LR それぞれのオフセットは・・・・ 2.5mV に 2.1mV・・・・・ブレッドボードの時と同じ。
個体によってもそれぞれ異なった。一番低かったのがこれ。

視聴の感じとしては、音が甘い感じ。言い換えると聞き易い。
中高域をプレーヤー直接と同じくらいのレベルに合わせると低域が明らかに増している。
低域重視ではない私には前段部だけでも十分だったかもしれない。
レベルは低いもののアンプのヒスノイズを気にし始めるとどうしようもない。

試しにバッファの NJM3414 を外し、回路はジャンパ(2-3、5-6ピン)してみた。
全体消費電流は、7.6mA。特にノイズレベルは下がらないが、これでもいける。自分には十分だ。

定位に関しては、えっ!というほど思いがけずうれしくなった。
広がりはヘッドホンにも依存するので何ともコメントしずらいが、あえてコメントすると。
テスト用や本番用のヘッドホンでは、どれも同じくらいであった。

ヘッドホンなので頭の中で像が結ばれるのを前提に、右の配置のコントラバスがちゃんと奥で聞こえるし、第一バイオリンは横の広がりも確認できる。金管系の張りだしがちょっと足りない。
ホール中央よりちょっと後ろで聴いている感じ。最前列が好きな方には物足りなく感じるかもしれない。
バッファありでも無しでも携帯プレーヤー直聞きと同じくらいの音量で比較すると低域の量感が増している。
全体的に音が太くなっているとも感じる。
低域好きにはたまらないかもしれない。
※インプレッションは私的な意見であくまでも主観です。NHK風に云うと “発言にはあくまでも個人差があります” です。

64ΩのVictor HP-RX900も結構ドライブしてくれるので、移動時だけでなく家でお気に入りヘッドホンで聞くのにも良さそう。とにかく聞き疲れしない。

今回の制作費はOPアンプとケースのみ新規購入で、ほかは手持ち部品を使用したのではっきりしたことは言えないが、ある程度パーツストックのある方はそれらを換算しても1000円以内で収まると思う。
抵抗は、値を計りながら使うので秋月でパック買いしているものだ。
330uFは視聴とケースに合わせて容量を安易に決定。面実装品であればもっと小型大容量が期待できる。

入力VRには、10KΩ を使用したが20KΩでも50KΩでも大差なかった。
手持ちの携帯プレーヤに合わせて増幅率を10倍と大きくとったのが仇になり、無音時 VRを最小と最大の時に少々ノイズが気になる。
中間あたりが一番ノイズはが少ない。理由は分からない。
視聴音量のVR位置が中間この辺りになるように入力機器の出力レベルに合わせるとよいかもしれない。
増幅率が2.5倍に下がるが、27KΩを6.8KΩ にするとずっと目立たなくなる。(回路図では修正済)
携帯プレーヤーに繋いでも音量的に問題のないことからこれにすればよかったと後悔。
なんのためのブレッドボードでのテストなんだ!と言われると反論できない。

手持ちのオペアンプで前段をNJM4580DD に変えてみると、音は一変。アンプのヒスノイズも聞こえない。
ノイズレベル、レンジ、音の立ち上がり、音の華やかさが異なるという感じ。
どちらかといえば、こちらの方が楽器が鳴っているという雰囲気がある。
オフセットはあまり変化なかった。全体消費電流が12.1mAまで上がったが音的には断然こちら方が好みである。
そこでこの組み合わせで電源のOPアンプをLM358 へ変更して全体消費電流を抑え(9.2mA)てみた。
ヘッドホンでは歪むところまでいきそうもないので十分ではないかと思う。

市販のヘッドホンアンプは持ち合わせていないので良く知らないが、比較対象として、
秋月から発売されている5Vのヘッドホンアンプキットと比較してみた。
音はさすがに雲泥の差がある。
音を追及される方にはこちらがお勧めだ。ヒスノイズは無くレンジも広く音の立ち上がりが鋭く気持がちいい。低域にもゆるさがない。
まさに、最前列で聴いているかのよう。広がりはエージングを進めることでかなり良くなってきている。
最初はオケの楽器がそれぞれが中央付近に集まっていて定位からみるとホール一番奥なのだが、音的には最前列といった感じがあった。
使用されているパーツも吟味されておりコストパフォーマンスはかなり高いと思う。
こちらは結構な出費になるが制作は1日あれば完成するし。あっけないほど簡単。

■課題

今回、メインの接続ソースである携帯プレーヤーはもともとヒスノイズの多いプレーヤーである。
カナル型のヘッドホンで聞いているだけで無音時にはノイズが聞こえる。VRをminにしても同じレベルで聞こえるのだからどうしようもない。
このプレーヤーをヘッドホンで聞くVRレベルで今回のアンプに接続すると、アンプ側で増幅時ある一定音量以上になるとこのヒスノイズを増幅してしまって耳についてしょうがない。
そのためプレーヤー側の音量をある程度大きくして音源のSNをごまかしている。

Line outの無いプレーヤーだからノイズはしょうがないのかと、家内のSUNDISK(sansa)プレーヤーではノイズがない。聞いているとプレーヤーから高域が出ていないように感じるが、ヒスノイズとは無関係そうだし。
単に高域が出ていないのはプレーヤーに取り込むときの変換ソフトの問題かもしれない。
同じCDを取り込んで試してみないと分らない・・・作業がまた増えた。

Line-outのあるCDプレーヤーに接続するとヒスノイズがない。
聞こえるのは今回制作のアンプのノイズくらいである。
今回は、こちらのCDプレーヤーに接続してインプレッションを行った。

とかくクラシックは全体的な音量が低く録音されているので、ノイジーな携帯プレーヤーは少々厳しい。
試しに、Evanessence の The Open Door を再生したら爆音だった。びっくりした。
意外とMP3への変換時の音量を上げておくというのが解決方法かもしれない。

結果として携帯プレーヤの音量を通常より上げているので、プレーヤーの「電池持ち」が悪くなっているように感じる。
ノイズの低いもしくはLine-outのあるプレーヤーが欲しくなってしまった。
Line-outのとれるプレーヤーって iPod 以外で何がある?

日ごろから大きな音で聴くタイプではないのだが、今回のヘッドホンアンプでも十分な量感を得られる。
とはいうものの 300Ωのヘッドホンでは、きっと出力不足を感じるのではないかと思う。
あいにく持ち合わせがないのが残念。

携帯プレーヤーの愚痴になってしました。課題は携帯プレーヤーか!
今回のアンプは1000円以下アンプとしては十分な機能をはたしていると思う。
OPアンプを交換して楽しめば十分元は取れそうだ。

今は、OPアンプをあれこれ交換して音の変化を楽しんでいる。
この結果も、まとまり次第載せていこうと思う。

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